会計業界について思うところ

 会計業界というある種癒しを求めて入った業界(これはコンサルに比べてという意味)ですが、1年ほど経験して思ったことを書き連ねます。


特徴➀プレッシャーはないが低賃金

今の税理士業界は受験者減による税理士の絶対数が不足していることから、営業は不要で紹介会から山のように仕事が来る状況です。

税理士の上司に聞いた話によると今は絶対数が不足しているうえに資格保有者はこじんまりとした個人事務所で好きな時間に負担のならない範囲でワークライフバランスを取りつつほしい収入を確保する人がいるせいで大~中規模の税理士事務所に負荷がかかっている状況との事。

しかしインボイス制度等や消費税の増税等年々税制改正があり複雑さを増していく中にあってはどこの会計事務所も猫の手も借りたい状況。

この中にあって就職状況は良いものの、未だに紙の書類や対面での巡回作業が多く、自動化やRPA等のデジタル化が十分でないため付加価値が低く低賃金の長時間労働が多くなっているのが実態です。

若手は仕事でのキャリアアップより資格をいの一番に取りたいと考えており、それももっともな事なのですが長時間労働により試験勉強が長期化しています。


特徴②ライセンスが無くても仕事はできる

特に税法の知識は前任者からの仕事のノウハウの伝授と社内研修がしっかりなされていれば仕事は十分にこなせます。これは当たり前のことですが税理士資格を持っている人よりもベテランの職員の方が知識・人当たり等総合的なビジネススキルにおいて税理士を上回っている事は珍しくありません。

もちろんライセンス自体は顧客への営業でかなり有効ですが取得に10年程の歳月をかけると考えた場合のコストベネフィット比率は如何とも言い難いです。

有りがちなのはライセンス保持者が事務所内で立場が上でも社内や顧客からの評判は今一つであったり(もちろん税法の知識は上)する事。

特徴③そもそも税理士試験の制度設計がいまいち

この試験の最大の問題点は相対評価である事。

質の担保のためとは言いつつも受験者層の上位10%前後しか合格できない試験(税法)のため、税理士不足の現在でも合格者数を増やせない事。

引用(https://sawada-tax.com/)より
この業界の最大の課題は業務の標準化・効率化にあり会計業務はそれが行いやすいのであるが個人商店的な気質な人が多いためあまり業界全体でうまくいっている所は存じ上げない。

それを行うためには税理士の数を増やすことで競争を促し、各社の業務の無駄や俗人化を排すことで業界全体の生産性の底上げを行う事だ。

しかしどれだけ優秀な人でも4~5年、長ければ10年前後の歳月を費やすことになるこの試験の易化は既得権益層を脅かすことになり反発は必定のため容易ではない。

アメリカの会計資格に倣うべき

翻ってアメリカの会計資格(米国税理士、米国公認会計士)はどうであろうか。
こちらは日本と比べると驚くほど簡単。
合格率は50%以上のCBT試験、しかも年中試験を行っている。

これは何故かというと試験の思想が異なっていて、あちらも独占資格は認めつつも一定の基準以上の人にはライセンスを与え市場競争でサービス価値を上げる戦略。

対して日本は供給を絞ることにより国税庁・金融庁の権威を高めることで省庁に従順な人間を増やす権威主義的性格を帯びている(その代わりの競争の緩和と身分保証)。

後者は競争を免除するため業界全体の低生産性が温存されるという弊害がある。

今後日本が沈んでいくことに伴って会計業界の人手不足は一層加速するため、早期の業界変革が望まれる。


結論:会計業界はローリスク・ローリターン

デメリットに重点を置きすぎたきらいがあるが良い所は競争が免除されている事とライセンスさえとればある程度の地位保全はできるという事だ。

しかしライセンスを取るために要した時間で他のスキルの構築ができないという点を鑑みると適性を考えたうえで進むのが良いのかもしれない。

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